【ラピスラズリ ~マーダンチャー鉱山産オールドストック~ 後編】
ラピスラズリが古くから王族や芸術家に重宝されてきた石であることを前編ではお話ししました。
そんなラピスラズリの最大の産地はアフガニスタン。
古来よりアフガニスタンは産出量・品質ともに、ラピスラズリの産地として世界一の地位を誇ってきました。
アフガニスタンのラピスラズリの中でも特別な最上級品が、今回ご紹介する
マーダンチャー鉱山産のラピスラズリです。
何と言ってもその吸い込まれそうな深いブルーが最高品質の証。
所々に輝く金色のパイライト(黄鉄鉱・おうてっこう)が、その美しさに花を添えます。
現地業者からは「マーダンチャー産のラピスラズリは不純物が少ないので、
持ってみるとわずかに軽く感じる」と聞いています。
ここでマーダンチャー鉱山についてご説明しましょう。
「マダンチャー」あるいは「マダンシャー」といった表記も見られますが、
現地のパシュトー語では「マーダンチャー(ル)」と発音するMadan char。Madanは鉱山、
charは四を意味し、バダフシャン州コランのジンドック地区の第四鉱山のことを指しています。
この鉱山は最高品質のラピスラズリが産出する鉱山として古くから有名でした。
地名のコランはイスラム教の聖典コーラン、またジンドックは幽霊を意味する「ジン」に由来しています。
1000年ほど前、近隣のラピスラズリ鉱山で頻繁に幽霊が目撃されたという言い伝えが
地名の語源であるとされています。
こうした噂を流すことで、盗掘などを避ける狙いがあったのかも知れません。
そんな逸話を持つマーダンチャー鉱山ですが、
残念ながら2014年に枯渇してしまい閉山しています。
またタリバン政権がラピスラズリの取引や移動に多額の税を課していることもあり、
現地でも価格が高騰してしまっているのが現状です。
今回お届けするのは、このマーダンチャー鉱山産ラピスラズリの希少なオールドストック品です。
マッチ箱博物館とラピスラズリの関係は古く、その始まりは1980年代にまでさかのぼります。
マーダンチャー鉱山のあるバダフシャン州は、
1978年から1989年まで続いたアフガニスタン紛争の激戦地でした。
そんなバダフシャン州から1980年代後半に日本にやって来た、
ソ連軍の砲撃による大きな傷を頬に持つ男性。
彼に見せられたラピスラズリの美しさに衝撃を受け、購入したのがすべての始まりでした。
あれから35年以上。
ラピスラズリは今日でも、マッチ箱博物館にとって特別な石の一つです。