マッチ箱博物館|MATCHBOX MUSEUM

【ファーデンクォーツ 前編】

【ファーデンクォーツ 前編】

今回ご紹介するのは世界一珍奇な変わり種の水晶、ファーデンクォーツです。

複雑、繊細、個性的・・・何とも形容しがたい独創的な姿は、
まさに自然というアーティストが生み出した唯一無二の芸術作品。

そしてその内部には、白い糸を閉じ込めたかのような筋が見られます。

非常に興味深い姿を持つこの水晶は、ファーデンクォーツと呼ばれています。


「ファーデン」とは「糸」を意味するドイツ語。
内部を走る特徴的な糸状の筋が、この石の名前の由来になっています。

一般的な水晶の形状は六角柱ですが、ファーデンクォーツの形状は実にさまざま!

世界各地で多種多様な水晶が産出していますが、
ファーデンクォーツの形状のバラエティは
世界一と言っていいでしょう。
そんな特徴に惹かれるコレクターが増加中の、今注目の水晶です。


ファーデンクォーツの「糸」には、果たしてどんな物語が織り込まれているのか。

そしてバラエティに富む形状は、いかにして生み出されたのか。

この不思議な水晶の秘密に迫ってみましょう。

多彩な形状のファーデンクォーツが並んでいるのを目にしたら、
まず「これが人の手の加わっていない天然の水晶?」と驚くことでしょう。

次に「こんなに形が違うのに、みんな同じ種類の水晶なの?」と感じるはずです。

厚みのない平板状のものもあれば、柱状の結晶がいくつも連なったような立体的なものもあります。

輪郭が比較的なだらかなものがあるかと思えば、凹凸だらけで全体的にギザギザしたものも・・・

まさしく千差万別で、「ファーデンクォーツはこんな形です」と一言で説明することなど
とてもできません。


形で定義することのできないファーデンクォーツを別の種類の水晶から区別しているのは、
名前の由来にもなっている、その内側に見える「糸(ファーデン)」です。

と言っても、糸状の内包物が閉じ込められているわけではありません。

この糸のような筋は水晶の「傷跡」、あるいは「繋ぎ目」であると考えられています。


「傷跡」であるとする説では、まず地震や地殻変動により水晶が割れます。

その後様々な条件が重なり、水晶が成長を続けて割れた箇所が修復され、
この修復された部分が白い糸のような筋になったと推測されます。


次に「繋ぎ目」であるとする説。
こちらは別々に成長した水晶が特殊な条件下で一つになり、
その繋ぎ目が白い筋になっている、という説です。

ファーデンクォーツの「糸」が傷跡であるにせよ繋ぎ目であるにせよ、
水晶の成長環境の様々な条件が揃った結果現れたものであることは間違いありません。


そして他の水晶には見られない形状も、こうした特殊な成長過程の中で
生み出されたものであると考えられています。

自分が出会ったファーデンクォーツの「糸」は、一体どのように紡がれたのか。

どんな環境で成長して、このような姿になったのか。

そんなことを考え始めると興味が尽きませんね。

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